Bさん ( 26歳 ) の場合

【平田一二に相談】

 結局、Bさんは両親の了承もえて会社を退職します。
 英語にかかわり続けるという夢を捨て切れなかったからでしょう。
 貯金したお金を使って留学するのが、その近道に思われたのです。
 そして、私と相談することになったのです。

この時点のBさんの状況整理

•  4年制大学の英文科を卒業し、日常会話レベルでの英語力は充実している。でも、専門職につくことができるほどの実力ではない。
•  海外旅行が好きで、渡航経験が豊富である。でも、海外生活をするまでのレベルなのか、判断は難しい。
•  大手旅行会社に入社すれば、すぐに実際の旅行の仕事ができるはずだと、短絡的な考え方をしている。いいかえれば、会社の運営にはさまざまな部署があるという、社会的認識に欠けている。
•  好きな英語を活かして、海外に関わる仕事がしたいのが希望。国内の会社に就職して、海外に出ることが可能な仕事につき、旅行会社でツアーコンダクターや旅行プランナーをしたいと思っている。

 会社を辞めたばかりのBさんに、旅行会社を選んだ理由や大学時代に熱中していたことなどを質問した。

 平田 「いま一番やりたいことは何ですか?」
 Bさん 「海外で観光ビジネスの勉強をすることです。旅行や観光の知識とノウハウをしっかりと身につけたい。今度こそ、旅行会社で経理ではなくて、旅行そのものに関わる仕事がしたいんです。」
 平田 「たとえ留学しても、帰国後に、あなたが身につけたことが活かせる会社はほとんどありません。大企業の中途採用は困難ですし、中小の旅行代理店でも同じです。たとえ旅行会社に再就職できたとしても、また不本意な仕事をやることも十分あります。」

 こうした会話から、私はBさんの問題点を整理してみました。
 そして、また、彼女の状況を細かく考えてみました。

平田一二の分析

•  Bさんは学歴や趣味、嗜好などで職業を選択している。
•  ツアーコンダクターや旅行プランナーは接客サービスが主な仕事なので、接客業務に向いていることが優先。海外の関心や企画力よりも必要なことである。
•  英語に関心はあるが、英語のエキスパートになるほどの興味はなく、その大半は外国への憧れである。

 ここで私が気づいたことは、Bさんは基本的に“人をあつかう仕事”の性格ではないということでした。
 そして、英語に固執してるものの、実際には何かに対する憧れが強いこともうかがえると判断しました。
 そこで彼女の頭の中から<海外>という言葉を切り離して、方向性を探るカウンセリングを試みました。

 平田 「Bさんはどんな趣味を持っていますか? 休日はどう過ごしています?」
 Bさん 「休みの日は、ガラスや陶器の展示会に行ったり、雑貨屋さんをのぞきに行くことが多いですね。それに海外に行くたびに、小皿や花瓶、グラスなんかを買い集めています。」

 私はBさんに、装飾小物に対する憧れがあると感じました。
 さらに、“ひと”よりも“モノ”を扱うことが好きなタイプだと感じました。
 また、ストレス解消が食べ歩きだということも分かり、食べ物にたいへん興味を持っていることにも注目しました。

最終的なBさんの分析

•  接客に関わる部分が旅行関係の仕事より少ない職業を選ぶ。モノを扱うほうが、彼女の性質にあっている。
•  食器や花瓶などインテリアでも、ごく限られたものに興味を示している。輸入雑貨のコレクションや鑑賞が心の安らぎになっており、これと関連を持たせた職業がよい。
•  さらに“食”の世界が加わったほうが視野も広くなる。それに関心のある仕事のほうが、多少待遇が悪くても長続きする。
•  国内にいても英語が活かせることを納得させる。海外ばかりに固執させない。

 このようなデータをもとに、私は手始めにフード関係の職種はどうかと話しました。
 もちろんBさんは、最初の相談の趣旨とかけはなれたアドバイスに戸惑いを示しました。
 でも、つぎのような説明を加えました。
 平田 「現在、食に関わる職業は“フードに関連する全体的なイメージをプロデュースする”という広いとらえ方に変わってきています。調理だけではなく、食を提供する場所そのものまでを考えるようになったのです。その結果、調理師はもちろんのこと、フード関係の本のライターやコーディネーターというように、仕事の幅が広がっているのです。」

 さらに話を進めていったのですが、接客の要素を多く含むものはすべてはずしました。
 そして、ライターは彼女の希望ではなかったので対象外にしました。
 結局、小物や雑貨と食に関わるという意味合いから、フードコーディネーターという仕事にしぼり込んだのです。
 でも、一人前になるまでには、さまざまな知識と下積みが必要なのは言うまでもありません。

 平田 「一人前になるまで、それ相当の時間がかかります。それに師匠になる人について、下積みが必要になるでしょう。それでも挑戦してみますか?」
 Bさん 「まだ貯金もありますので、しばらくなんとかなると思います。」
 平田 「フードコーディネーターになるには、調理や色彩学、テーブルセッティング、フラワーアレンジメント、インテリアなどの基礎知識が必要となります。でも、このすべてを取得するのはかなりたいへんです。実際は、その道のプロに弟子入りするか、まずは調理の基礎からの勉強です。どちらにしても国内の修行が一番です。」

料理教室のアシスタントからスタート

 こうして、Bさんはすぐに料理教室に通い始めたのです。
 そして、ひと通りのコースを修了した彼女は、自分の通っていた教室の先生のアシスタントにしてくれるよう頼み込んで、やっとフードコーディネーターへの第一歩を踏み出したのです。

 Bさん 「アシスタントというよりも丁稚奉公みたいだけど、ストレスだらけのOL時代とは180度違って、毎日よい経験を積んでいる実感があります。目標までは先が長いけど、楽しみながら夢を実現していこうと思います。」




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Kさん(25歳)の場合
Bさん(26歳)の場合



平田一二(ひらたつまびらか)

東京生まれ。赤坂小・赤坂中・東海大付属高輪台高卒業、スペインのマラガ国際大学へ留学。' 76年、帰国後に相談室開設。自分の能力や可能性をのばしたいと考える女性のために、≪キャリア留学≫という新しいスタイルを確立して、 先鞭をつけたキャリアコンサルタント。
平成25年10月より下田循環器・腎臓クリニックの相談役に就任する。

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