「自分らしさ」
今の自分を大切にしましょう
人は2つの苦労をすると言われています。1つが、過去が現在を殺す"持ち越し苦労"。もう1つが、未来が現在を殺す"取り越し苦労"。だから、いま一瞬を大切にして、ひたすら目の前にあることに打ち込むのです。そうすると、自分をきちんと活かすことができるのです。
Eさんは、ことあるごとに、「大学へ行っていればよかった」とつぶやきます。
でもそのあと、必ず、「あのときは大学には行きたくなくて、働きたかった」とつけ加えるのが口癖です。
「だったら、今働けているから、いいじゃない?」とか、「大学に行きたいなら今からだって行けるじゃない?」と友人が助言しても、聞く耳を持とうとしません。
仕事はそこそこ順調だし、いい評価も得ているEさんには、大学卒の学歴がないことで不憫な思いをしているわけでもなさそうです。
仕事のあとは、同僚や友人と飲みに行き、翌日、また会社へ向かう日々。
大学へ行っていれば、もっと楽しい人生になっていたに違いないとEさんは信じていました。
今の自分を起点にすることなく、Eさんは、過去の自分を起点にすることで過去に引きずられたまま生きてきたのです。
あるとき、友人に誘われて行った旅行で、観光地のガラス工房を訪ねます。
そこではガラスでペンダントを作る体験レッスンが開かれていました。
友人に誘われるがまま、Eさんもペンダント作りに挑戦してみます。
Eさんは、時が過ぎるのも忘れ、思いのほか熱中していました。
そして旅行から帰ってきたEさんは、ガラス教室を探しだし、ガラス作りを習い始めたのです。
これまでは何の変哲もなかった日常が、ガラス作りに出会ってから色を変えました。
また、過去を憂えることなく、今、目の前で起きていることを考える時間が増えました。
それはEさんをとても充実感あふれる気分にしてくれます。
仕事を早く片付けて、ガラス教室には何時に着いて、あれをしよう、これをしよう。
すると、いつの間にかEさんは、以前の口癖を言わないようになっていたのです。
2年間、ガラス教室で学んだEさんは、ガラス職人としてガラス工房に転職をする夢を持ち始めました。
そして、3年目にはさらに本格的にガラス工芸の技術を習得するカリキュラムを専攻します。
そこは学歴など関係のない世界です。
Eさんは自分の腕がもっと上がるよう、素晴らしい作品が作れるよう、日々努力しています。
もう学歴なんか、気にしません。
「時間は前にしか進まない!」これがEさんの、新しい口癖です。
Mさんは毎年、会社の健康診断を受けています。
ある年、再検査が必要となり、胃の内視鏡検査を受けた結果、良性のポリープができていることがわかりました。
医師が言うには、「もう少し経過を診ていきましょう」と言うことです。
仕事を休むこともなく、元気に暮らしていたのですが、Mさんはその結果を聞いた途端に落ち込んでしまいました。
悪い病気ではないと言われたのに、あれこれと想像して悪いことばかり考えてしまい、すっかり悲劇のヒロインです。
Mさんが何を思おうとも、時間は流れ、Mさんもきちんと通勤する生活が続いていました。
けれど、以前のように覇気がなく、何を食べてもあまりおいしくなく、いつも重い気分を引きずっています。
そんなある日、テレビで見たヨガに興味を惹かれたMさんは、ヨガの教則ビデオを買ってみました。
さっそく見よう見まねでトライします。
毎晩寝る前にはヨガのポーズをとるのです。
身体の血液の循環が良くなり、食事にも気を遣うようになりました。
するとどうでしょう。
昔のように身体が元気になり、食事もおいしく感じるようになってきたのです。
振り返ると、検査結果を聞いてからの数ヵ月間は、考えてもしょうがない先の不安なことばかりに、とらわれていたようです。
くよくよすることで気持ちがいっぱいになってしまい、現在という時を無駄に過ごしていたかのようでした。
すっかり心身ともに元気を取り戻したMさんは、胃にポリープがある事実を受け止めた上で、今を、より充実した時間にすることを意識しているといいます。
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