「決心」
本当に覚悟してみましょう
覚悟のなさは不安や心配をつぎつぎと生みだします。ネコを買って育てようとした。面倒臭がり屋だったので、ネコを買ったことを悔やんで憂うつになり、ついに不眠症になってしまい、ネコの何倍ものお金を治療に使ってしまった。だから、やることには腹をククる、やる時には心を決めるのです。最悪の状況にあっても必死の覚悟で取り組めば、何も恐れるものはありません。
Hさんは29歳で地方都市に住んでます。
一度は短大に入学しましたが、どうしても4年制大学に行きたい気持ちが捨てきれず、4年制大学に編入しました。
入った学部は経済学部。
特に経済学部がよかったわけではなく、4年制大学卒業という学歴への憧れがあっただけで、これを学びたいという明確な理由はなかったそうです。
ただ、理由はどうであれ、目標通りに編入を果たしたバイタリティには目を見張るものがあります。
Hさんは、大学卒業後、地元の不動産屋に入社し、総務職に就きました。
学生時代にやってみたい仕事がなかったうえ、就職先も少なく、やっと入れた会社です。
「仕事内容に贅沢なんか言ってられなかった」Hさんは、コピー取りからお茶汲み、営業まで何でもやります。
就職後の生活は、ステレオタイプなOLっぽい日々。
友達と新しいお店に行ったり、季節の変わり目にはバーゲンをチェックしたり、いくつかの女性誌にはマメに目を通し、流行っている曲をカラオケで歌うのが好きです。
週に一度は、フラワーアレンジメントの教室にも通い、上級者コースのカリキュラムを受講していました。
順調にいけば、インストラクターの免状ももらえる段階です。
ただ、そこまでがんばっているフラワーでさえ、行動のきっかけは、友達に誘われてなんとなく始めたもので、惰性でここまで来たとのことです。
Hさんは、周りに流されることで、無難に生きてきたタイプの人かもしれません。
あるとき親友が、社会保険労務士に興味があると言いだしました。
Hさんは社労士という職業がどんな職業か知りませんでした。
親友は学校の資料を取り寄せ、学校見学に行きたいから一緒に来て欲しいと言います。
Hさんは気軽に一緒についていくことにしました。
学校見学では、授業風景を見学したり、職員の人の話を聞いたりして、なんとなく面白そうだと感じ始めます。
そして、親友と一緒にいくつかの学校を見学したあと、Hさんだけが入学します。
理由は、何か生活に張り合いが出そう、日々の励みになりそうだから、ということでした。
一方、友達のほうは、やっぱり興味が湧かなかったとのことで入学しなかったのです。
Hさんが相談に来たときは27歳でした。
社労士の勉強を始めて2年後、2回目の国家試験を直前に控えた時期でした。
社労士の試験は年に一度しかありません。
そして、三度目の受験に向けて勉強中のHさん。
でも、本当に社労士が自分に向いているという確信が持てないため、受験勉強に本腰が入りません。
フラワーアレンジメントの勉強も、インストラクター向けにがんばるなら、時間が必要です。
フラワーの仕事が向いているかどうかもわかりません。
どちらに進むべきか、Hさんは心を決めかねていました。
一見、選択肢が絞り込まれているように見えますが、Hさんの場合、どの選択肢も漠然とした理由から進んできた道なのです。
これでは迷うのも無理はありません。
私は、もっと好きなこと、やりたいことを洗いだせるよう、アドバイスしました。
相談をしていくうちにわかったことは、教師的な人を導く職業、人の役に立つ仕事に向いているということです。
私は、フラワーの道を薦め、社労士は諦めるよう彼女に言いました。
しかし、本人は、もはや合格という結果に執着していました。
その結果、Hさんは、時間制限のないフラワーの道を少しスローペースで進めながら、受験勉強をすると決めたのです。
相談のあとに受けた二度目の国家試験も不合格でしたが、それでもやってみたい、あと一度だけ、絶対に後悔したくないから死ぬ気でがんばると、Hさんは三度目にも挑戦。
私が相談で、本人ががんばっていることを、辞めるよう薦めることはめったにありません。
彼女のひたむきさには敬服します。
三度目の試験で合格したなら、Hさんは、幸せになるでしょう。
覚悟してのぞむHさんに、もう迷いはありません。
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