「選択」
目の前の選択はすぐにします
人生は一つひとつの自己選択の連続で成り立っています。だから、目の前の選択を先延ばしにしてはいけません。何かを取ったら何かを捨てなければ、一歩進んだ新しい選択肢には出会えないのです。だけど一度選択しても、それに一生縛られることはありません。
Mさんは、21歳。
流行のファッションに身を包み、ときおりあどけなさがのぞく、今どきの女の子です。
Mさんは、高校時代に、カフェのウェイトレスや、雑貨の販売など、人と接するアルバイトをしたことがありますが、長くは続かなかったそうです。
高校卒業と同時に、憧れだった、1年制の製菓の専門学校に進みますが、在学中の前半で、すでに、「私には合わないかも……」と思い始めました。
その理由は、「作りたいお菓子を作らせてもらえない」というものでした。
物事を習得するためには、まず基本を学ばなければなりません。
けれども、Mさんは自分の抱いていたパティシエのイメージがふくらみ、最初から好きなことだけをやれると思っていたようです。
不満を抱えてはいましたが、Mさんはがんばって就職し、ホテルのパティシエ見習いとして就職します。
就職してからは、輪をかけて、不満が募ります。
パティシエの仕事は、彼女が思っていたより遥かに上下関係が厳しく、けっこうな重労働です。
時間との闘いの中、連携プレイでお菓子を作るため、協調性も必要とされます。
中でも、Mさんは、「大きな声を出さなくちゃいけないのが、一番辛かった」と言います。
相談の間、言葉を一つひとつ選んで明るくハキハキ話す様子からすると、それは意外な感想でした。
結局、半年でホテルを退社したMさんは、コンピュータのオペレータとして転職。
ほとんど1日コンピュータとにらめっこです。
人と触れ合うことが少ないオペレータの仕事は最初は気楽でしたが、パソコンに向き合っていることで片頭痛や疲れ目に悩まされ、あげくには、「パソコンの文字に洗脳されそう」なまでに追いつめられてしまいます。
今回も、Mさんは実際にどういう場面が想定されるか、自分の得意なこと、好きなことを突き詰めて考えることなく職を決めたようです。
やがてMさんは退職します。
このとき彼女は、自分の"得意"を見つめ直すことにしました。
「大きな声を出すのは苦手」、「人と人が熱く触れ合うのはキツイ」、「一日中、機械に向かい合うのは性に合わない」などの志向が明確になってきました。
相談を進めていく中でMさんは、子供の頃の憧れを思い出しました。
今の彼女を揺さぶったのは、幼い頃入院したときに優しかった看護婦さんの記憶でした。
「自分の状況を考えると、看護助手としてならやっていけるかもしれない」。
Mさんは、体当たりで、自分の道を探り続けてきました。
そして再び、新しい扉を開きました。
現在、Mさんは看護助手としての一歩を踏み出し、「ひょっとしたら天職かも」と思い始めているようです。
一見、これまでの選択は失敗に見えるかもしれませんが、そうではありません。
彼女は選択し続けてきたのです。
より自分を活かすことのできる、居場所を。
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