「自信」
起業家になる

　今のあなたに、仕事にできるかどうかは分からないけれど、やってみたい興味のあるものがある。
　あるいは、自分にとってほんとに好きなことがあるとしたら、それはとても幸せなことです。
　多くの人たちは、日常にあふれる情報や人の意見に振り回されて、自分が本当に何をしたらいいのかが分からなくなってしまっているからです。

　Ｈさんは広告代理店に勤めていますが、仕事にはあまり意欲を持つことができませんでした。
　それよりも好きだったのはお酒です。
　気のきいたバーでカクテルやワイン、ブランデーに舌鼓を打つのが好きでした。
　時間があれば、世の中ではあまり知られていないお酒を酒屋で探したり、ラベルの裏にある物語や酒の作り手の思いを調べて感動したり、自分だったらこんな落ち着いたバーを作りたいと構想を立てたりしています。
　いつしか、Ｈさんはお酒のことなら誰にも負けないという自信を持つようになりました。
　 とはいえ、それが仕事になるとは考えてもいませんでした。

　でも、不思議なものです。
　そんなＨさんの様子を見て、お店を持ってみないかと提案する人が現れたのです。
　その人と話をするうちに、Ｈさんは自分の店を持つという夢がだんだん現実に思えてきたのです。
　お酒に対する思いや店づくりのコンセプトなど、Ｈさんにはしっかりとした考えがありましたから、あとは資金を貯めるだけです。
　そしてついにＨさんは、好きなことで企業家を目指す道に進んでしまったのです。

　そうはいっても、「好きなことで食べていくのは難しいよ」と言う人もいます。
　「Ｈさんはきっと才能や幸運に恵まれていたんだ」とか、「自分にはそんなに夢中になれるものがない」と言う人もいるかも知れません。
　でもそれは、好きなことをすぐにお金や社会的な成功に変えようとすることからくる焦りでは……。
　自分が一番好きで、最も得意なこと、本当に大切だと思えることには、利益や肩書きや学歴を考えずに打ち込めるものです。
　やりたいことから生まれてくる確信と自信によって、それを活かす場所を求めて会社の中になければ自分で起こす。
　つまり、企業家を目指すことになるのです。