「進路」 大学を卒業しても大学院へ進学する、または就職もしないという人は多くなっているようです。 Yさんも、これはといった会社を20社ほど回りましたが、何をやりたいのか分からなかったし、就職試験にも受かりませんでした。 「その仕事をしているうちに映像の仕事もいいなぁと思って、テレビ番組の製作会社で働いている知人に映像の仕事をやりたいと相談したんです。そしたら、アルバイトの採用面接にとりあえず来てといわれて喜んで行きました。そこで、本気でテレビの仕事をしてみたいが、勤務するのは週に4日で残業はできないといいました。じつはその頃、ヴォーカルでバンド活動もしていて忙しかったんです。そしたら、『それが本気でやりたいという姿勢か。私たちの仕事をバカにしているのか!』と一喝されたんです。その知人はテレビ番組の製作に、生活のすべてを賭けていたんです。そんな人の前で、その人の仕事をバンド活動の合間にしたいと言ったようなもので……。怒るのも当然ですね。」 そんな知人の怒りを目にしたYさんは、いかに自分の仕事に対する認識が甘かったかを思い知らされます。 そこで、自分も生活のすべてを投げ打ってでも、ヴォーカルという職業にこだわりたいと友人や知人のツテをたどってインディーズのCDを出している音楽会社に、シンガーソングライターとして就職しました。 「大学を卒業して就職できなかったことは、自分も両親もかなりショックでしたが、今考えると自分にとってはよかった、というか、なるべくしてこうなったという感じがします。知人は、私が本気で映像の仕事をやりたいと思っていないことを見抜いたんですね。しかも、音楽のほうが大切なんでしょと、気づかせてくれた。彼女に笑われないよう、しっかり職業意識を持ってやっていきたいです。」 会社に就職できなかったことで、自分の全人格を否定された思いに捕われることがあるでしょうが、そんなことはありません。 |
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平田一二(ひらたつまびらか) |
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