「好き」
M・Kさん(28歳・女性)

証券会社での先行きに不安を感じて

 彼女は当時、フードライター(料理関係の執筆家)になりたいという希望をすでに持っていましたが、よりハッキリとした確信を求めて、私のところへ相談に来た人です。

 4年制大学を卒業していますが、大学時代はアナウンス研究会に所属し、DJやラジオドラマ制作に力を入れ、ひとつのことをやり遂げる達成感を得ていました。
 一方では当初の文学部から社会学部への転部を果たし、好きな道を実現させようという努力も惜しまずしています。
 人並みの学力と、対人関係を円滑に進められる能力を身につけ、就職活動にも臨みました。
 「不況に強い会社ならどこでもいい」、「人と接する仕事がしたい」、「仕事を通じて何か資格を得たい」というのが希望でした。

 ところが、ちょうど就職氷河期に遭遇していたために、受けた会社の内定は思うように取れません。
 業種を絞らず“下手な鉄砲も数打ちゃ当たる”式に多くの会社も受けましたが、うまく決まりません。
 ようやく、母親の友人の夫が支店長をしているという証券会社に入社が決まり、そこで営業職につきました。
 「自分を取ってくれる会社に対しては何でもしようという意欲とともに、どんな仕事でもそつなくこなせるという自信もありました」さらに、「自分にとって新しい経済、株式の知識を得られ、仕事内容にはやりがいを感じていたし、職場での人間関係も良好。来店者と接するのも楽しく、毎日が変化に満ちていました」と、当時を振り返ります。

 ただ、就業時間前に出社させられたり、上司への主張が通らなかったりと不満が生じてきました。
 ノルマ達成のプレッシャーもあって、何度か辞めようと思ったこともあったようです。でも、「最低3年は勤めよう」と決めていたことから、くじけずに仕事を続け、25歳までには証券外務員第一種と二種の免許を取得していました。
 やがてノルマが廃止されるのにともなって業務が店頭接客のみとなり、5時きっかりに退社できるようにもなりました。
 でも、店頭レディーが彼女を含めて2人だけになり、接客が忙しくなりました。
 楽しいはずだった接客にも嫌気が差し始めたころ、支店の方針の変更により、1年で再び営業に携わることになったのです。
 ところが、朝7時半までの出社が義務づけられたにも関わらず、時間外手当は出ず、満足感は得られませんでした。
 上司の威圧的な態度や、来店者の横柄さにも不満が募りました。

 そのうち、大手証券会社が倒産し、同じ店頭レディーが再就職に困っている姿を見て、彼女もツブシのきかない職場にいることを実感。
 景気の善し悪しに左右され、給与水準の低い割に労働力を搾取される会社を捨て、転職を決意したのです。

●セルフスピンドルをやって料理だけでなく“食に関するすべて”に興味が広がる

 彼女がフードライターになりたいと思った理由としては、高校時代から趣味で小説や漫画の執筆をやっていたこと、読書や料理などが好きだったことがあるようです。
 1 ヵ月間の作業を行った彼女は、「仮にフードライターの道に進んだときに、食の世界ではまだまだ認知が少ない女性シェフの生きざまや、名店以外にも隠れた店の紹介等を、小説のような形態で紹介していきたいという傾向があるように思えました」と、自分の考えを文章にまとめています。

 また、彼女が選んだ記事の中に『細かい料理法よりも、写真によるイメージを重視する“ビジュアル料理本”の読者が増えてきた』という言葉があり、彼女自身このような料理本を“鑑賞”するのが好きだということで、料理を“つくる”よりも、料理本を“演出”するほうが彼女自身の傾向に合っている可能性も見えてきました。

 彼女の選んだ見出しと記事は、圧倒的に<食>に関するものが多く、真の興味は『会話・言語的分野』に決まりました。
 そして、本人が希望する<ライター>という職業がまさにこの分野に該当することも確認できたのです。
 でも、彼女自身が、「料理だけでなく人の生き方、都市に息づく文化や土地が持つ空気などにも興味の裾野が広がった」ため、最終的には同じ『会話・言語的分野』に該当する<放送作家>を目指してみようということになったのです。
 会社を辞めた彼女は派遣会社に登録し、今は事務の仕事に就きながら、放送作家の通信講座を受講しています。



・TOPへ
・興味は6分野ある
・真の興味がある場所
・自分で見つけだす
・新聞をサーチする
・プロセスを知る
・体験談を読む
   ├ M・Kさん(28歳・女性)
   ├ Y・Tさん(28歳・女性)
   └ Y・Hさん(25歳・男性)




平田一二(ひらたつまびらか)

東京生まれ。赤坂小・赤坂中・東海大付属高輪台高卒業、スペインのマラガ国際大学へ留学。' 76年、帰国後に相談室開設。自分の能力や可能性をのばしたいと考える女性のために、≪キャリア留学≫という新しいスタイルを確立して、 先鞭をつけたキャリアコンサルタント。

>>


(著作)キャリア留学のすすめ

(著作)成田発OL便


(著作)プロフェッショナル留学 (著作)ス-パーキャリア留学


(著作)海外とっておきカルチャー教室ガイド (著作)海外専門学校研修・留学ガイド




(著作)海外おケイコ (著作)あなたの適職が見つかる本




(著作)アメリカ旅行フリータイムプラン (著作)アメリカ大学院留学



(著作)自分を生かす職の見つけ方 (著作)就職ノート


 
(著作)自分を生かす職の見つけ方  必ず!やりたい仕事は見えてくる!
 

 
キャリア教育と授業プログラム